□言葉にできるものならば□
なんとなく・・というか彼女、「ぼたんさん」って人は不思議な人だ。。 と雪村蛍子は思う。 屈託なく笑う彼女を見ていると自分と同じ次元の人だと勘違いをおこしてしまうくらい 本当に近い存在になるのに、ふとした時に見せる顔は妙に大人の女性の顔をしていて そんな時はとてつもなく遠い存在に感じる時があるのだ。 たぶんそれは蛍子よりも遙か遠い過去を知るその顔なのかもしれないし、自分が死んでもなお 生き続ける彼女の顔なのかもしれない。 だからだろうか。 ちょっとしたいたずら心というか興味本位とでもいうのだろうか? 彼女の恋愛感について知りたいと思ってしまった。 たいした理由もつけなくても呼び出せばひょろっと顔を出すぼたんを呼び出してみることにした。 別段理由がなくても、理由があったとしても彼女のことだからそこらへんは深く詮索なんてしないだろう。 「やー!蛍子ちゃん、ひさびさだねぇー」 「ぼたんさん、ほんとおひさしぶりー。」 繁華街の雑踏を抜け、裏通りにある小さなカフェは二人のお決まりの場所。 客自体が少ないのもあるが、ここのスィーツはなんでも絶品で二人一緒のお気に入りは紅茶のシフォンケーキ。 これとお変わり自由のコーヒー&紅茶があれば何時間でもいすわれるねなどと話していると店のマスターの咳払いが聞こえてきた。 お互いの会わない期間の話を一通り済ませた後、蛍子は聞いてみることにした。 ぼたんっていう人の恋愛論を。 彼女はいままでどのような恋をしてきたのだろうか。 どんな片思いを、失恋を、してきたのだろうか。 その恋は彼女の人生観や人間形成にどんな変化をもたらしたんだろうか? もし大恋愛を経験していたのだとしたらぜひ聞いてみたい。 自分は初恋も片思いも恋愛もすべてたった一人の奴だったから。 きっとこれからも彼一人だろうと確信してるからこそ、ちょっとのぞいてみたいのだ。 他人の、ぼたんの恋愛を。 「・・・あたしの恋愛論?」 きょとんとした顔で蛍子の顔を見るぼたん。ちょっと照れたように髪をなでるとふっと笑う。 ふっと笑った顔が大人の女性の顔をしていて蛍子はドキっとする。 「なんでそんなこと聞きたいの?突然にさ。」 「や・・。突然というか。よく私達のことは詮索してくるけど自分のことはまったく話さないでしょ?ちょっと 聞いてみたかったのよ。」 やんわり、自分の興味本位だということに後ろめたさを感じつつも適当な理由をひっぱってきた。 「だって昔すぎて忘れたよー」 えへへ、と笑う。あ、今の顔はみしったぼたんだ。と蛍子は思う。 最近彼女の表情にみしった彼女としらない彼女が同居しているような気がしてついついそんな風に知ってる知らないと 区別をつけてしまう。 「・・・それってどんだけ昔なのよ。いいよ、覚えてるのからで。」 蛍子もつられて笑う。 「といってもさー。。。昔は結構惚れっぽくて、面食いで・・て今もソレは変わってないかもだけど。それなりに恋はしてきた つもりだよ?」 意外だった。 きっと彼女は言い渋るだろうと思っていたから。珍しく自分の話をし始めた。 いつもこちらからの質問には言葉を濁したり、話を変えたりするのに。なにか心境の変化でもあったのだろうか。 でも話す気になっているのだからとめる必要は全然ないのだけれど。 「あんまり一人一人について何があったとかちゃんと覚えていることって少ないんだけどね、でもどれひとつとして 同じ恋愛はなかったし、同じような人は一人もいなかったと思う。」 ほっと一息紅茶を飲みまた言葉をつむぎだす。 ぼたんについて言わせてもらうと言葉を選んで話すってことはまずない。 思ったことを思ったようにことばにして話す人だと蛍子は思っている。それで失敗するところも見ているが、だけど ソレがいいところだと思う。彼女の言葉は生きていてストレートだ。すっとはいってくる。 この恋愛論もきっとそうだろう。本音なんだろうなと思わせる。 そういうところは幽助と共通していると思う。だから一緒にいても疲れないのかもとも。 相手が傷つかないように先の先をみて言葉を選ぶのは蔵馬さんの方だろうなとも蛍子は思っている。 蔵馬の場合はその選び方は的確でかつ、時間を要しない。頭の回転の速さにひそかに尊敬をしてあこがれてもいるのだ。 「どの恋愛においても変わっていないのはあたし自身は全ての恋に本気だったってこと。」 「へー。ぼたんさんっておくてで恋愛下手だとおもってたのに。意外な言葉がでてきたね。」 「そお?」 「うん、そう思う。」 「相手が自分に本気でないとしても、本気でないと分かっていても好きなものはしょうがないんだよね。あたしってほら、 好きになったら一直線になるタイプだったっていうか。それしかみえなくてね。好きになったら好きって言わないと駄目な性分 だったんだよ。相手の一時の気の迷いでさえかまわないってね。結構熱いタイプだろ?」 「そりゃ・・・大胆。・・でも過去形なのね。」 「そう。過去形。」 あ。また。 また大人の顔になった。 過去の恋愛においてなにがあったのかますます気になるところだが。 それ以上の話はしてくれそうにないとおもった時だった。 「今はね。昔と違って相手の立場と自分の立場と。考えるようになってきたというかね。。」 うーんと背伸びをして最後のケーキの一切れを口にいれ一呼吸をおく。 「なんていうかね。。蛍子ちゃんの場合は幽助の全てを知ったのは二人の関係が始まってからずっと後だよね?」 「?」 蛍子は首をかしげる。ちょっとぼたんの説明が分かりづらかったようだ。 「じゃあ、こうしよう。もし蛍子ちゃんがいまだ片思いで、でも幽助の全てを先に知っていたとしたら、その恋をどうしていたか? っていう話だよ。」 「あ・・なるほどね。ほんと。。そういわれるとどうしていたんだろうね。」 それでも好きだと幽助に告白していただろうか。幽助が自分に好きだという気持ちを告白してきただろうか? お互いにお互いのことを考え、その気持ちを忘れようと努力していたかもしれない。 そんなの関係ないと、今と同じように二人過ごしているのだろうか。 「あー・・っと、ごめんごめん。蛍子ちゃんは深く考えなくていいよ。」 「ただね。昔と違って・・そうだな。お互いの立ち位置を考えるようになったというかね・・。相容れない関係だと知ったら ・・・それは踏み込むべきじゃないというか・・。」 「・・・それって今好きな人がいるって言うこと?」 ビクっとぼたんの体が一瞬反応したように見えたが気付かなかったことにしておこう。 蛍子は言葉を待つ。 「先に進むのが怖いっていうのが本当のとこなのかも。相手のことを考えてっていうのを建前にしてさ。・・・ だって・・好きだなんていえないよ。先がわかっているのに。好きだなんてさ・・。」 ぼたんは思う。 あたしは蛍子ちゃんと幽助のような境遇ではないし、かといって桑ちゃんと雪菜ちゃんのように先が分かっていても それでも想いをを貫けるような強い意思はもってない。 蔵馬は好きで好きで、しょうがない・・だけどその気持ちは一時の錯覚なのかもしれないと二の足を踏んでいる。 「・・・そっか。」 蛍子は微笑む。ぼたんの”好き”な誰かは追求はしないけれど。 「でも私はやっぱり幽助に好きだって言うと思う。だって私の命は限られてるもの。」 命の期限はみなあるもの。 長さが違うだけ。だけど・・・・。 それでも自分が先に旅立つのだとしたら。 そう考えたら蛍子の方は先に答えがでたようだ。 「なんだか蛍子ちゃんらしい答えだね。」 「ふふ・・そうかな。」 まぁ結果論からいうと、現実にはならないけどね。と笑う。 「あたしも少しはみならわなきゃいけないかもね。」 ぼたんも蛍子につられ笑う。よぎるのは赤毛のアイツのことだ。 まだ迷いはあるけれど。 「うん。うまくいくの、願ってるよ。」 「何十年先か、わからないよ?」 「・・・せめて私が生きてる間にしてよ。」 「考えとく。」 「・・ていうかそろそろお相手を教えてくれてもいいんじゃないの?知ってる人?」 「さてね。内緒。」 end □後書き□ 本当はこれをマンガに起こしたくて何度も挑戦したのですが、無理でした。 というかこの文章自体何がなんだかなんですけどね。。。orz もうね、文章書きさんってなんてすごいんだろうと!!!! 何時間かかってんだよwwそしてなんだこのざまはww す み ま せ ん で し た 。 ぼたんに恋愛を語らせる為に蛍子に登場してもらいました。静流さんだともっと突っ込んだ話に いきそうになるし、雪菜ちゃんはこの手は論外なので。 以前も後書きに書きましたがぼたんは処女ではありません。 長く生きている分それなりに恋愛経験していてほしいのですよ。 その方が自分が描く分には二次創作としておもしろいからww 蔵馬はでてきませんが、ぼ→蔵ですね。 蛍子はこの時点でぼたんの好きな相手=コエンマか蔵馬かくらいまでは推測してます。 (最後の内緒で身内だろうと察知。ぼたん失言。) 時間の流れ的に原作終了後くらいなのかもしれませんね。 以前に描いた物では蔵馬は制服をきていますが、作品ごとに関連性はありません。 なのでいろいろなパターンの蔵馬とぼたんの話を書ければよいなと思ってます。 余談ですがタイトルは元々は恋愛論にしようとおもっていたのですが、なんとなく お題に沿ってる部分があったのでお題消化にまわしました。 ここまで読んでくださってお疲れ様でしたそして本当にありがとうございました。